2022年2月26日、一般財団法人未来を創る財団社会生産性研究会プロジェクトチームは、オープンフォーラム「日本の低い生産性 原因に迫る-なにをなすべきか- 」を開催いたしました。
本フォーラムは日本経済新聞全国版に広告を掲出し、約700名のお申込みをいただきました。今回のテーマである「生産性」が高い関心を集めることが伺えます。
本フォーラムでは、未来を創る財団理事長/元トヨタ自動車副社長 石坂芳男氏による基調プレゼン、社会生産性研究会研究主任 戸田佑也氏による報告書解説、そして国立シンガポール大学リークワンユー公共政策大学院兼任教授田村耕太郎氏、経済ジャーナリスト/千葉商科大学教授の磯山友幸氏をゲストに迎えた対談を行いました。
アーカイヴ動画
フォーラムのアーカイヴ動画は以下よりご覧いただけます。当日お見逃しになられた方もぜひご視聴ください。
報告書
フォーラムにおいて公開した報告書を次の通り掲載いたします。フォーラムでは時間の都合よりかいつまんでの解説となりますので、あわせてぜひご一読ください。
参加者のみなさまからお寄せいただいたご意見・コメント
フォーラムにご参加いただいたみなさまより示唆に富むご意見・コメントを多数お寄せいただいております。その一部をご紹介させていただきます。
生産性向上は人財力だという結論は素晴らしいと改めて痛感しました。これを単なる研究ではなく、日本社会を変えていくムーブメントにしていくか、考えなくてはいけないと思いました。
これほど短い時間の中で中身の濃いお話を聞かせていただき、脳がかき乱されましたが、大変良い刺激となりました。
一人当たり付加価値の増大というゴールを定め、労働力の構造に着目され、データの国際比較の下で、方策を講じるというご説明は勉強になりました。
また、討議の中で、円の購買力が愕然とするほどに落ちていることはお話を聞いて納得しました。
今後、定住外国人研究と同じように全国でもフォーラムを開催されるとのこと、楽しみにしています。
私も現在、地域での生産性の向上にどう取り組んでいくか思案しているところでございます。
九州の観光資源は山ほどあり、地域の資源を再評価して、商品やサービスを作り直せば、マークアップして、海外の富裕層を取り込むいことは可能だと感じてます。
また、農業の6次産業化し、農産物輸出の面でも商機は十分あると思います。
ただ、この辺りを進めるにも、地域ではかなりのギャップがあり、デジタルも含めて、人的資源への投資が不可欠だと実感しています。
1時間という短時間の中でよくまとまったフォーラムであったと思います。
久保(認定特定非営利活動法人プラチナ・ギルドの会 副理事長)
日本の生産性の低さは、結局は教育の問題というふうにまとめられていた感があります。
勿論、教育は大きいです。しかし、高度経済成長時代から日本の企業の組織風土が変わっていない、即ち滅私奉公・年功序列が崩れてこない背景には、人種のダイバシティが進まない現実があります。
人材の多様化が実現していない、みな同質化し、日本人的思考に囚われている。
だから個々人の個性が問題視されないのではないですか?
そもそも、一人当たりで議論する「生産性」という言葉自体が古いのではないでしょうか?
生産性を10%上げろというと、すべての社員が10%実績を上げろと言ってるように聞こえます。今までの会社の思考は、まさにそうでした。生産性は結果指標なのに、目的指標と捉えているようです。
むしろ「組織内に、爆発的に成長した人材が何人いるか」、というような指標に置き換えないと、いつまでも生産性で引っ張るのは、金太郎あめを助長するリスクがあります。
フォーラムを聞きながら、そんなことを考えてしまいました。
未来を創る財団のセミナー、ご案内いただき大変良い機会を得ました。
中野 孝幸
労働力構造の転換の遅れについて、データを見ながらここまでひどくなったのかと情けない気持ち。
はるか昔の現役時代の頃から、特にホワイトカラーの労働生産性の低さ、非効率さはとても問題でしたが、ここ10年も変わらずかと。
日本人、日本組織は、グローバルな刺激にさらされる機会が少なすぎることが一つの原因ではないかなと思ったりしています。
田村先生の対談の発言は、切れ味良く、指摘は非常にクリアーです。
50代、60代の経営者層が、本音で従業員、職員にこれまでの10倍規模の教育投資を理解して実行出来るか、仮にその社員がスキルアップ、能力アップして転職力を高めて移籍していくことをいとわずにやり続けられるかです。
経団連での生産性向上研究は、どういう内容になっているのでしょうか?
貴財団の問題意識も的確だったのですが、その後、研究者の方々が、4年近く、90回に及ぶ調査結果の持ち寄りと議論を重ねた結果、ずばり核心に迫る内容になったことは素晴らしい成果と思います。日本がこのまま沈没して行かないように、ぎりぎりのところで良い処方箋を示して頂いたと思います。
オープンフォーラム、大変参考になりました。
磯山さんと対談した、田村耕太郎さんという方は、面白い人ですね。
鳥取県という、あまり波風の立たない地方の出身にしては、当選したり、落選したり、波乱の多い政治歴をお持ちのようですが、とても、今のチマチマとした政界には収まらないスケールを感じました。それだけに、これからの日本の政治には必要な人材と言えるのかもしれません。
フォーラムたいへん示唆に富む内容でした、拝聴させていただき感謝しております。
地域フォーラムの方も注目しております。
20年前の欧米の生産性と今の日本が同等という事実、低い円の力について、初任給や学費やランチといった具体的なお話により世界との差を強烈に感じました。
日本にまだお金があるうちにならなんとかなるとご指摘もありましたので、子どものためにも変えていかないと思いました。
日本の低い生産性が、以前から気になっていましたので、大変勉強になりました。
基調プレゼン、田村耕太郎さんと磯山友幸さんの対談はとても有意義でした。
いつの間にか、所得の低い、物価の安い国に成り下がった日本が、再度輝きを取り戻
してほしいと願っています。
今後の展開
未来を創る財団では、今回のオープンフォーラムでの反響を受け、全国各地において「地域フォーラム」の展開を準備しております。
日本の生産性を大きく変革するためのムーヴメントを起こしていくべく、今後も活動して参りますので、ぜひ応援いただけますと幸いです。
関連記事(2022/8/10 追記)
本フォーラムの中でも特に多くの議論を喚起した田村氏・磯山氏のゲスト対談の続篇として「日本を成長させる人材をどう育てるか」をテーマとした対談を行いました。
同対談については以下の記事をご覧ください。
大変有意義で濃密な機会を下さり有難うございました。
日本の生産性(付加価値)向上の課題は、日本(人)固有の3点、①教育②あいまい③あまえ、に如何に対処するか、に掛かっていると感じました。
中でも「教育」の与える影響は大きいと考えます。例えば、職業の専門化を進めるには、学歴偏重主義が改められるべきだと思うのです。また、協調を重視する日本社会・文化の土台がある中で、付加価値算出が重要であるという、意識の改革、これも教育無しには成し得ないと考えます。
ジョブディスクリプションの明確化が不十分(「あいまい」)であることにより外国籍の方々が力を発揮できない現状。コスト、付加価値いずれを追究するのか、虻蜂取らずになってしまっている現実。これは、スペシャリストよりもとジェネラリストを重視してきたこととも無縁ではないと思うのです。
「あまえ」は起業家マインドが育たないこと、管理者が少なく、一般社員が少ないことの遠因ではないでしょうか。どこかの組織、誰かの庇護の下にあれば安定が得られるという心理です。
「あいまい」「あまえ」共、可視化が容易ではなく、日本人の深層心理に深く根を下ろしているものであり、一朝一夕にどうにかなる、またどうにかする訳にはいかないものではあると思います。
ですが、日本の生産性向上が待ったなしである以上、やはり社会の各方面で教育という後天的な手段が、非常に重要になると考えます。
また、捉え方の差異のみで、実態はほぼ同一のものであることから、「消費税」ではなく、欧州等で広く用いられている「付加価値税」という概念を導入することも一案ではないかと考えます。付加価値という概念を広く浸透させていくうえで、我々の生活と不可分な税を媒介とする効果は少なくないと考えます。